岸田直子さん、ここUAEで尊敬する日本女性の一人です。本当に彼女はすごい。
彼女のどこがスゴイって、タイトルのセリフそのままの「そこはかとないおおらかさ」です。私も常々「この国は怒ったら負けだ」と思って過ごしていますが、もはや勝ち負けというステージではなく、彼女の場合は「怒り」と「人生」とを天秤にかけているというところがもう脱帽です、はい。

 才色兼備、微笑みを絶やさない岸田さんは青年の船の通訳をされた時に現在の旦那さま(UAEの中で二番目に小さい首長国、ウム・アル・カイワインの男性)と出会い、周囲の大反対を押し切った形で結婚されます。そして7年のうちに5人もの子宝に恵まれます。恵まれるといっても、幼い5人を育てるのは並大抵のことではありません、しかも日本とはしきたりも、気候もまったく違う中東で。岸田さんのおっしゃる「子供を産んでから13年くらいは学校以外は家から一歩も出なかった」という形容が本当にあっていると思うわけです(こちらは買い物は男性のお仕事だそうです)。13年も家に。結婚される前までは世界中を飛び回っていた岸田さんがその生活を受け入れたというのもすごい。旦那さまは「子供たちはいつか必ず大きくなる、それは遠い未来のことではない」と彼女を諭すのです。その旦那様は優秀な方で、奨学生としてアメリカでITを学ばれ、帰国後は故郷の発展に貢献されるお仕事をされています。そして、子供たちがある程度大きくなり(これがまたみんな優秀で優しいとキタ)、岸田さんも外に出る時間が出来たころ、彼女は「日本とUAEの文化交流ができる場所を」と「UAE日本文化センター」というNPO法人を立ち上げます。日本語をUAEの方に、アラビア語をこちら在住の日本の方に教える教室をはじめ、毎年数回は文化交流の場として日本の伝統的な書道や茶道、空手、剣道、華道などなどを楽しむイベントを開かれ、たくさんの方が参加しています。この活動がもう8年近いというのだからどれだけの人に新しい知識と発見と喜びという財産を与えているのか。心から拍手を送りたいし、彼女を尊敬するのでした。

そして岸田さんがこちらでの生活を書いた「アラブからこんにちは」という書籍と、東日本大震災後、UAEでチャリティ着物ショーをし、そのお金を日本に義援金として送るまでの悲喜こもごもを書いた「アラブからのメッセージ」という二冊の書籍。どちらも日本で受賞をされています。そしてそれを鼻にかけることなく、誰にでも気さくに接されるところが本当に素敵。

私が「今年の抱負は自立です」と申し上げたとき、「そーんな、小さい子ども四人もいるのに自立なんて。あははは。私なんて自分が自立する前に子供たちが自立しちゃったわよ」とスガスガしく一蹴されたのは記憶に新しい(「あなたはあなたのペースでいいのよ」、という愛あるメッセージが裏にあった、と私は解釈している)し、子供たちの学校の選択で迷っていたときは「学校に理想郷はない、何を念頭におくかで決めたらどうかしら」とアドバイスいただいた。お正月にご自宅に伺った際、家の敷地内に建設中のお部屋をご案内いただいたときも、「これも随分前に始まったのだけどね、なんだかんだで(建設が)止まっちゃってるの。でもこれをいちいち怒っていたら人生が終わってしまうのよ」とおっしゃった。
もともとバイタリティのある方が、それまでとまったく違う環境である程度のところまで生きてこられた処世術のようなものがこのセリフに凝縮されているように私は思うのでした。

現在はUAEの方々が「日本語スピーチコンテスト」に出られるということでその指導をされており、そのほかにも「アラビア語読み書き特訓コース」など短期の講座、「アルアインへのフィールドトリップ」など様々な文化伝播と交流を企画されている岸田さん、いつまでも素敵な笑顔を私達に見せてくださいね。